連合会環境部会セッション 今後の展開

(一社)奈良県建築士会 生駒支部 支部長 伏見康司

 

  「環境部会活動報告と今後の展開」では、「気候風土型住宅・省エネガイドラインについて考える」と題して、別府コンベンションセンター会議室31には、地域の特性を活かした住宅を手掛ける技術者が多数集まった。

 

平成27年7月に公布された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」が法制化される頃に、鋼製建具の製造と販売をする大手企業から営業が訪ねてきた。そもそもそんな話が嫌いな私に、図や表の数字を分かりやすく説明をしてくれたのを覚えている。揚げ足をとって抵抗をする私を尻目に話をやめようともせず、挙句の果てには、近い将来の家の断面図を示してくれた。それは、屋根の上に太陽光発電の機材が搭載され、小屋裏には熱交換型の換気扇が屋外まで筒でつながれている。窓の硝子は三重で、高効率の給湯機が備え付けられている。この手の話を聞くたびに目にする同じ絵だ。鋼製建具の製造会社ではあるが、窓の枠の部材は樹脂が良いと言っている。開口部は熱の損失がないように、小さくするのだそうだ。これからの日本の家はこうだと胸を張っている。困ったものだ。密集市街地や、年中、窓を開けることが困難な地域の話ならば分からなくもないが、それを日本全国のいたるところで実践をする話ではあるまい。ここは奈良である。

 

温室効果炭素の排出量を削減するにあたり、我が国の約束を実現するために、家庭部門に目を向けたことには理解ができる。各家庭での生活のなかで、消費をする熱量が、戸建て住宅の性能によるところであるのもわかる。しかし、それをひとところに押し込んでしまっては、日本の住宅文化はどこへ行くのであろう。法整備の時に、そのような声は、当然上っていたわけで、法制化に際しては「地域の気候風土に対応した伝統的構法の建築物などの承継を可能とする仕組みを検討すること」とされ、その後、すぐに、経済産業省と国土交通省から外皮基準の適用が困難であると認められるものには適用しないと経過措置として附則がされた。これが「気候風土適応住宅」である。

 

今年3月末に国土交通省から所管行政庁あてに、「地域の気候及び風土に応じた住宅であることにより外皮基準に適合させることが困難であると認める際の判断について(技術的助言)」が通達された。つまり、各地域での伝統的な工法の継承や、気候、風土、文化に根差した住まいづくりや住まい方を含めた日本の住宅文化の良さの再発見、普及に向けた「和の住まい」を推進するということだ。この推進体制は関係省庁で連絡会議を設けている。掲げると文化庁、農林水産省、林野庁、建材産業省、国土交通省、観光庁である。そして、国土交通省からは「和の住まいの推進」が発信され、この中で公開をしている。誰でも閲覧ができるので、一度みられたい。

 

 「気候風土適応住宅」の特徴とその例は難しくはない。大きく5つの観点からとらえられている。(1)様式・形態・空間構成は地域や外部環境に固有の気象要素(外気温、日射、外部風など)の活用や制御に資する、地域に根ざした住宅の様式や形態、空間構成に関する特徴が考えられる。具体的には縁側などである。(2)構工法に関しては、地域で旧来より用いられてきた構造方式や構造材の使用方法、劣化外力となる地域の気象要素に対する耐久性向上に資する住宅各部の材料・構法などに関する特徴が掲げられる。土壁や手刻みによる伝統的な継ぎ手や仕口も含まれる。(3)材料・生産体制として、地域で生産・供給される建築材料の使用、地域の生産者や職人が住宅生産に関与する仕組みなどに関する特徴には、自然素材の使用や大工などの職人の登用が考えられる。(4)景観形成として、地域のまちなみや集落景観の維持保全に資する、建物や外構の構成、形態、材料などに関する特徴が考えられる。(5)住まい方として、地域でこれまで培われてきた暮らしを継承しているとみられる住まい方に関する特徴があるかどうかである。設備に頼らない暮らしもそのひとつだ。

 

 奈良県でも所管行政庁が必要と認める要素を、取り扱うことだと察する。その認定方法は3つある。①国の技術助言を参考に認定する。②地域独自に策定した認定指針をもとに認定する。③他地域の認定指針を参考に認定する。

 

いずれにしても、奈良県には地域の風土をもとに、伝統的な建造物がたくさんあり、その特徴も表現をするには顕著な設えを備えている。上記の①②③は十分に参考にできることであるが、その認定については、決められたのちに追従していくのではなく、実績が豊富な現場の実務者が意見を出したうえで、認定されることを望むところである。当会が関係所管行政との連絡調整をとりながら進めるのが望ましいと考える。